特集2

ヘッケ指標は、数体や大域函数体のイデアル類群の乗法的指標(Multiplicative character)である。ヘッケ指標は、射影的写像をもつ合成を経由して、主イデール(principal idele)の指標に一意に対応する。

この定義は指標の定義に依存している。指標の定義は書籍の筆者により少し異なっている。0を含まない複素数(「準指標とも言う)への準同型として定義されるかもしれないし、Cの単位円の群(unit circle in C)(「ユニタリ性」)であるかもしれない。任意のイデール類群の準指標は、一意的にユニタリ指標にノルムの実数べきをかけた値として書くことができ、2つの定義にさほどの大きな差異はない。

ヘッケ指標χの導手(conductor)は、χがmod mのヘッケ指標となる最大イデアルのmのことである。ここにmodmのヘッケ指標χとは、全てのv-adicな成分が1+mOvにあるような有限なイデール群の上の指標と考えたとき、χが自明な場合を言う。

イデアルを使う定義

ヘッケに遡ると、ヘッケ指標の元来の定義は、分数イデアル上の指標を使っていた。数体Kに対し、m=mfm∞を、有限部分としてはKのイデアルmfを持ち、無限部分としてはKの実数の座(place)の「形式的な」積として持つK-モジュラス(modulus)とする。ImでKの分数イデアルの群を素イデアルmfを表し、Pmで主分数イデアル(a)の部分群を表す。ここにaは、その因子の多重度に応じて、各々のmの座で1に近く。mfの中の各々の有限の座vに対し、ordv(a-1)は、少なくともmfの中のvの成分と同じ大きさであり、aはm∞への各々の実埋め込みの下では正である。modulus m持つヘッケ指標は、Imから0でない複素数への群準同型であり、Pmの中のイデアル(a)に対し、その値は、Kのすべてのアルキメデス的完備化の乗法群の積から0でない複素数への連続写像のaでの値に等しい。アルキメデス的完備化の乗法群上では、この準同型の各々の局所成分は、同じ実数成分を持っている。(ここに、K上の様々なアルキメデス的な座に対応する埋め込みを使い、Kのアルキメデス的完備化の積の中へaを埋め込む。)このようにして、ヘッケ指標はmodulo mとする射類体(ray class group)上で定義される。ここの射類体とは商Im/Pmである。

厳密に言うと、ヘッケは、総実な生成子を持つような場合の主イデアルの振る舞いについての基本的な事項を作った。従って、上の定義について、彼は全ての実数の座が現れるモジュラスを持つ仕事をしたのみであった。無限部分m∞は、現在では無限タイプの考え方に含まれている。

2つの定義の間の関係

イデアルでの定義はイデール的な定義よりも非常に複雑で、ヘッケの定義したことの動機は、(ヘッケのL-函数と呼ばれる)L-函数の構成にあった。ヘッケのL-函数はディリクレのL-函数の考えを、有理数から他の代数体へ拡張したものである。ヘッケ指標χに対し、ヘッケ指標のL-函数は、次のディリクレ級数として定義される。

ヘッケ指標のモジュラスmと素な整数イデアルを渡る。記号N(I)はイデアルノルム(ideal norm)を意味する。部分群Pm上のヘッケ指標の振る舞いを統制する共通の実数部の条件は、ディリクレ級数がある適切な半平面の領域で絶対収束することを意味している。

ヘッケはこれらのL-函数が全複素平面へ有理型接続を持ち、指標が自明であるときにはs=1でオーダー1である極を持ち、それ以外では解析的であることを証明した。原始ヘッケ指標(原始ディリクレ指標に同じ方法であるmodulusに相対的に定義された)に対し、ヘッケは、これらのL-函数が指標のL-函数の函数等式を満たし、L-函数の複素共役指標であることを示した。

主イデアル上の座と、無限での座を含む全ての例外有限集合の上で1である単円の上への写像を取ることで、イデール類群の指標ψを考える。すると、ψはイデアル群ISの指標χを生成し、イデアル群はS上に入らない素イデアル上の自由アーベル群となる。Sに入らない各々の素イデアルpの統一された元πを取り、各々のpを、pの中ではπであり、そうでない場合は1であるようなイデールのクラスへ写すことにより、ISからイデアル類への写像Πを定義することができる。χをΠとψの合成とすると、χはイデアル群上の指標としてうまく定義できる。

逆の方向では、ISの許容(admissible)指標χが与えられると、一意にイデール類群ψが対応する。ここの許容とは、集合Sを基礎とするmodulus mが存在し、指標χが1mod mであるイデアル上で1となることを言う。

指標が大きいということは、指標が有限オーダーのタイプではないことを意味する無限タイプであるということである。有限オーダーのヘッケ指標は、ある意味で、すべて類体論により考慮されていて、それらのL-函数はアルティンのL-函数によりアルティン相互法則として示されている。しかし、ガウス体(Gaussian field)と同じくらい単純な体でさえ、重要な方法で有限のオーダーを超えたヘッケ指標を持っている(以下の例を参照)。後日の虚数乗法論の発達では、大きな指標の固有な座の存在が、代数多様体の、(ひいては、モチーフの)重要なクラスのハッセ・ヴェイユのL-函数を提供することになることを示していた。

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